INTERVIEW

日々美味しい食と温泉に癒されるご機嫌な町へ、軽やかに移住。

2020年、突如現れた新型コロナウイルスによって人々の生活は大きく左右されることになりました。今回ご紹介する二人も、コロナの影響を受け、海外へ移住しようとしていた計画を断念。しかし、そんな折に出会った阿蘇・久住の美しい風景に心惹かれて移住することを決めました。

 

長良将史ササオアイ

 

コロナ禍で移動が制限されている中、数日の滞在で家を見つけ、妊娠初期に環境をガラリと変えるという、なんともアクロバティックな移住の選択をしたのが、長良さん夫妻です。

仕事は都市部に残しつつ、竹田で子どもと一緒に新しい生活を始めた二人に移住のきっかけや現在の暮らしについて伺いました。

 

長良将史ササオアイ

プロフィール

長良将史 映像制作
大阪府箕面市出身。京都の大学を出た後、大阪を拠点に映像制作の仕事をフリーランスとして始める。竹田では芸術分野の作品制作を中心に活動し、商業的な仕事では撮影・編集からディレクションまでを一貫して行っており、移住後も都心部からの仕事を継続して受けている。竹田市への移住が初めての田舎暮らし。
https://masashinagara.wixsite.com/home

 

ササオアイ グラフィックデザイナー・アートクラス主宰
奈良県宇陀市出身。大阪市内のデザイン専門学校を卒業後、グラフィックデザイナーとしてデザイン会社に勤務。その後、社会人枠で美術大学に進学し、中学校美術、こどもやおとなを対象とした絵画造形・療育クラスなどの講師業を経て、自身の教室sasao 0% art class を主催。美術大学在学中に長良さんと出会い、作品制作にも携わるように。2020年移住を機に結婚し、2021年に出産。
https://iaoasas.wixsite.com/home

  • 移住を考えたきっかけを教えてください。

    長良さん:当初オランダに移住をしようと考えていました。デンマークで参加した舞台作品が賞に引っかかったこともあり、海外での活動を応援してくれる方がいたんです。でも移住を決意した後に新型コロナが蔓延し始めて。海外へ渡航ができなかったこと、併せて大阪の家を契約の関係で出なくてはならなかったことから、他に良い場所はないかと探し始めたのがきっかけでした。

    ササオさん:そんな時にたまたま熊本県の産山村に住む友人のところへ遊びに行ったんです。そしたら大自然がすぐ側にある暮らしや、友人のライフスタイルに感動して「阿蘇めっちゃ良いやん! ここに住もう!」ってなって。2020年の3月頃から阿蘇周辺で家探しを始めました。

     

  • 移住先に竹田を選んだ決め手は何でしたか?

    長良さん:一番の決め手は「TSG 竹田総合学院」があったことですね。仕事の作業部屋も作れる家を探していたんですけど、なかなか賃貸で広い家は出てないですし、住んでもない場所の家を購入するのもどうかと悩んでいました。そうしたら元中学校をアーティストのアトリエとして貸し出している「TSG 竹田総合学院」を借りれると聞いて。それなら家の広さは気にしなくて良いねと話しました。

    ササオさん:産山村と阿蘇市、竹田を見て回ったのですが、竹田はそこまで手を入れなくても住める家が多いのが印象的でした。2日間の空き家案内も分刻みのスケジュール表が届いて、びっくり(笑)。でもそれが安心でしたね。家とスタジオが見つかったので、移住を検討し始めて4ヶ月ほどで転入。ちょうど妊娠が発覚したのもあって、妊娠中の引っ越しは大変でしたが、関西の友人の助けと、「竹田市移住定住支援センター」の方々がアフターフォローをしっかりして下さったことがとても心強かったです。

     

  • コロナ禍で、さらに出産を控えた中で環境を変えることに不安はありませんでしたか?

    ササオさん:なかなか地域に足を運ぶことができなかったので、その間に移住したらどうしたら良いか、家探しをする際にどういうところを見たら良いか、私たちの周りに都市部から地方へ移住を経験した先輩や友人たちに聞いたり、本やYouTubeを見たりして情報収集をしていました。「水問題は気をつけた方が良い」とか「集落にどんな人が住んでいるか聞いた方が良い」とか、いろんなアドバイスをもらって準備を進めました。幸い悪阻が軽かったこともあり、妊娠初期の期間は安静にしつつも、必死の遠隔リサーチに明け暮れました(笑)。移住に向けて、それまで通っていた関西の産婦人科から、移住後に受け入れてくれるところを探す必要があったのですが、その際も「竹田市移住定住支援センター」の方や大分の友人に大分の産婦人科事情を聞いたり、自分で調べたりした結果、車で1時間ほどで行ける大分市内の助産院でお世話になることになりました。そこでの先生方との素晴らしい出会いや夫のサポートもあり、特に不安はなかったです。

  • 都市部から地方に移住をして苦労した点、不便だと感じた点はありますか?

    長良さん:苦労したのは家の中にムカデやネズミが出たりとか、寒くて家の中がマイナス7℃になって水道管が凍ったこととか、あとポンプの老朽化で水が止まったことくらいです(笑)。でも水が止まった時は班長さんがタンクに水を入れて持ってきてくれたりして助かりました。インターネットの速度も速いですし、ネット注文したものも翌日には届きますから、想像していたより不便さは感じないです。来る前は田舎暮らしはハードルが高いと思っていましたけど、これから移住を考えている人には、そんなに心配はいらないよと言いたいですね。

    ササオさん:草刈りをしなきゃいけないとか遠出する際、アクセス面で遠いなーと感じる時はありますけど、竹田市内で生活する分には支障はないです。移住前に心配なことや大変なことを聞いていましたし、私の生まれ育ったところと竹田の景色や風景が似ているので懐かしい気持ちもあり、苦労はあまり感じませんでした。

  • 竹田に移住をして、暮らしの環境はどう変化しましたか?

    長良さん:まず、庭と畑のついた広い家に住めたことで生活の質が格段に上がりました。仕事面でもスタジオが広いので表現の可能性がとても広がっています。家でやることとスタジオでやることの棲み分けがきっちり出来るようになり、メリハリが生まれ、特に生活面を大切にする余裕が生まれました。温泉に家族と通うことが日々の楽しみになっています。

  • ササオさん:家にたくさん友人を招けるようになりましたし、アーティストを呼んでアートインレジデンスとして共に生活しながら一緒に創作活動ができるようになりました。実際私たちが引っ越してきてから2週間とあかずにずっと友人が来てくれていて。みんな「ご飯は美味しいし、自然もめっちゃ良くて最高!」って帰っていくのが嬉しいですね。去年から夫が野菜作りを始めて(私はコンポスト係)、美味しい野菜が収穫できました。自身の活動としては、産山村で暮らす友人と今の自分たちで何か発信できないかと、ふたりで企画してフリーペーパーを発刊することにしました。こちらでの生活で感じたことや日々のことなどのコラムなどを掲載しています。不定期での発刊ですが、ふたりでゆるゆる自宅やTSGで編集作業をしています。

  • 1年ほど住んでみて見つけた竹田の魅力を教えてください。

    長良さん:海の幸、山の幸、野菜、お酒、そして何よりも水がとびきり美味しいというのは、生活していて一番嬉しいことです。人が生きていく上で欠かすことができない大事な食を楽しめる環境がとても魅力だと思います。

    ササオさん:大自然がすぐ側にあることと、温泉に毎日入れることが住んで良かったなと思います。あとは地域の人から野菜をもらったり、奈良漬をあげたらお返しにメロンをいただいたり(笑)、周りの人が優しく接してくれるのも嬉しいですね。

  • これから移住を考えている人へアドバイスをお願いします。

    長良さん:一年経って、大事だと思うことは、今、自分の生活において重要なことは何か、何が自分や家族にとって大切なのかをしっかり見極めること。そうすれば、環境が変わってもあまり迷うことが無いのかなぁと思います。例えば、都心部から移住するからには竹田(田舎)のために役に立たねば!と思うよりも、まずは自分の「生活」をしっかりと大切にして、シンプルな考えを軸にすれば、同じようなことを考えている人と繋がるし、知らぬ間に竹田の役に立ってることもあるのかなぁと思います。当初、僕自身が地域貢献について若干力んでいたので、、それは都心部に住む人間の驕りだったと捉えて今は反省しています(笑)。

編集後記

取材に訪れた日も長良さんが演出する竹田で開催予定の舞台公演のためにダンサーたちが滞在制作に来ていました。ちょうど制作はお休みの日だったようで近くの川へ泳ぎに行くなど、竹田での生活と仕事をすっかり満喫している長良夫妻。妊娠中にほぼ知り合いがいない土地へ移るという選択は、誰もができることではありませんが、二人の移住がスムーズだったのは、移住後にどんな苦労があるか、どんな問題が起きるかという備えがしっかり出来ていたからだと思います。困難があってもその中に楽しさや面白さを見つけ、地域の方の優しさに触れながら、マイペースに暮らす二人がとても印象的でした。

お問合せ